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【「Les Montagnards」 for PROTESTERS】

Les Montagnards01.jpg
 
「.......RESERCH」のルックブックのスタイリングをしました。
 
テーマは「Les Montagnards」 for PROTESTERS
「Les Montagnards」は「山のひと」
「PROTESTERS」は「抗議するひと」
という意味です。
 
最初にデザイナーの小林さんからお話をいただいたのは昨年2017年の11月ごろ。
「デモをテーマにしたコレクションをやりたいんだ。だから、服もまっ黒。
興味があったら本間に力を借りたいんだよね」と。
 
頼りにされることは嬉しいのですが、
僕自身「デモ」という行為を推奨してはいないので、
少し悩みました。
大層な身分のようではありますが、僕はいつも仕事の依頼があると
「この仕事は自分がやるべきことなのか」と考えます。

その理由は僕にも少しばかりの信念があり、この信念を曲げるようなことをして得たお金で暮らしていても、つまらないからです。

お金持ちにはなれませんでしたが、この信念を曲げることなく、僕たち家族が食べるものに困ることもなく暮らせることは、ほんとうに幸せなことだと思っています。
 
話がそれましたが、この仕事の依頼を受けるか否か?
そろそろ決断のときが近づいていました。
一ヶ月ほど悩みに悩んで、僕は断ることに決めました。
断られたほうは、すぐにでも次の代役を探さないといけないので、
また今度会ったときにあらためて謝ろうと、
失礼は承知の上で、早々にお断りの理由をメールで述べました。
 
少々長いですが、下記の文章はそのときの僕と小林さんの文章のやりとりです。
一語一句変えておりません。
(掲載においては、小林さんからも許可をいただいております)
 
 
『2017年12月8日 12:20』

小林さん、お疲れ様です。

連絡が遅くなってすいません。
小林さんから撮影の話をいただいてから、しばらく考えておりました。
そのことについて、僕の意見を書きたいと思います。

原発事故の後、僕も反原発運動のデモに参加したことがありました。
あのときは大規模なデモが多くの場所で行われていて、その現場がどういったものなのかを
確かめに行きたい気持ちと、自分自身のなかにある政治に対しての虚無感を
同じ志を持つ人たちと共有することで、また思うことがあるのかもしれない
という気持ちがありました。

デモの現場は思っていたよりも盛り上がっていました。
反復するシュプレヒコールに圧倒され、自分も声を合わせていると
「もしかしたら、なにかが変わるのではないか」
という気持ちになりました。

しかし、原発に関しての日本政府の対応はご存知のとおりです。

そこから僕はデモへは行かなくなりました。
その理由はデモの根底に「NO」というエネルギーが渦巻いているのではないか
と思ったからです。
一つの事象に「YES」と答えることと「NO」と答えることは
大きく異なるような気がします。
「YES」と答えるよりも「NO」と答えるほうが、責任が重く
たくさんの知識を必要とします。

原発問題に関してはあまりにも莫大な費用と期間を要して構築されたシステムを
もう、僕(たち)の力ではどうにもならないということを知りました。

そして、そのことに「NO」と言い続ける責任の重さを感じて
僕は逃げたのです。

そのころから自然へと興味が湧いてきて、山に入っては小さな「YES」をみつけて
文章に残す作家の本を読み耽りました。

僕も同じように山に入りただ歩いているだけで、救われたような気持ちになりました。

今回の小林さんのテーマを考えたときに、どうしても僕の中でクリエイションの膨らみを
持たすことができませんでした。

それは僕自身のエゴが強すぎて、もしかしたらプロとしては失格なのかもしれません。

ですが、これからの自分の時間を出来る限り「YES」と寄り添いたいと思っています。

長々と生意気なことを書いてすいません。

どうか、気を悪くされないでください。
連絡が遅くなり申し訳ありませんでした。

本間良二
 
 
『2017年12月8日 13:09』

オッス、本間。
メールありがとう。

本間がデモの NOの空気感が嫌で関わりたくないと
言っていたのはもちろん、覚えている。

時代が大きく動いていて
個人の自由の尊重より
国という単位で考えなければ という声が支配的になっている
そこで察しがつく、デモが多くなる世の中になるんだろうと。

本間の言うように、その場はYESとNOの対立構造になり
怒号渦巻く状態になるでしょう

そんな異議申し立てすら、もう届かない声になろうとしている。
だから、届かないことが判明した側は急進的な行動が多くなる。

そんな、この先のギザギザした世の中あるいはデモ現場に
花を撒く必要があると思ったんだよ
実際のデモ現場だけの話ではなくて
異議申し立てをしなくてはいけないのに
対立構造が激化する場面ではただのNoの感情の渦に巻かれて
しまう。
興奮しすぎた感情を"花"と言うものでスイッチしたいから
暴力の場に花の力を添えて違う景色にしたい。
だから"対立構造下の花の存在"がテーマとも言える。

右でも左でもなく、山側の心安らぐ日々が大事だと思い出してもらう為に。

Yesはもちろん大事、コミュニケーションの核だから
でも、この先の時代は異議申し立てがしやすい環境をみんなそれぞれの
方法で守れるように関与したい。

そんな気持ちでこの異議申し立て企画の事を
本間に話ししました。


小林
 
 
このやりとりがあって、僕はこの仕事の依頼を受けることにしました。
カメラマンの安部英知さん、アートディレクターの峯崎ノリテルくんも加わり、
個々の具体的なイメージとイメージを重ね合わせて、ビジュアル化しています。

この仕事に従事しているとき、デザイナーや、カメラマン、アートディレクター、ヘア、メイク、そしてスタイリストという一個人の主義主張をすんなりと受け入れてくれる
このファッションという世界の寛容さや、自由さ。
「この部分に惹かれて僕はこの世界に飛び込んだんだな」ということを再確認できました。

とてもいい仕事ができました。
よかったら手に取ってみてください。
(H間)
 

Les Montagnards06.jpg

TFS 10th anniversary 1st thing】

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以前にも書いたとおり、The Fhont Shopは今年で10周年をむかえる。
10周年企画をいろいろと考えた結果「木箱」を製作して店先に設置することにした。
この木箱は海外を旅していると、たまに見かける地域があって、その地域の雰囲気も自分には好みなところが多かった。
どこの街かは忘れたけど、街と人と木箱と天気がうまく混ざり合って、何もかも好みの感じだった。
それを作ろうと思った次第。
...いつもの「虫」が騒ぎだしていた。
 
10年というと気が遠くなるような長さだが、過ぎてしまえばゾッとするほどの短い時間をあらためてふりかえってみると、僕はいつもお店のことを考えていた。

最初の1年間、お店は僕の自己表現の場だった。
その解釈は決して誤りではないが、やっていくうちに徐々に違和感を覚えて
そのうちに少し肩の力が抜けだしてきた。
それから常連ができはじめて、絵を描いている人、立体物を製作している人、ジンを作っている人たちが自分たちの作品を見せに来てくれるようになった。
あまり社交家ではない僕が多くの作家と関わりを持つことができたのも、このお店をはじめたおかげだったし、彼らの作品を興味のある人たちに手渡すことができたのも、このお店のおかげだった。
自分のものだけではなく、自分が良いと思ったものを商品として仕入れて売るという面白みを知ったのもこの頃だった。

売り上げがうまくたたない時には、じっくりと考えてみると必ずいくつかの問題点が出てきた。
あとはその問題点を自分らしく修正していけばいい。
お店は僕にたくさんのことを気づかせてくれたし、たくさんの出会いもくれた。
それと僕と家族とスタッフを食わせてくれた。
 
お店は無限の可能性を秘めている箱だ。
自分がやりたいことを行動に起こしてみると、箱の反響は僕の予想に反することもあったし、予想以上の反響が起きることもあった。
いつからか僕はその反響を自分ではコントロールできないと悟った。
その理由はこの箱にはたくさんの人たちが出入りをしていて、その人たち一人一人をコントロールすることが、この箱の役割ではないと気づいたからだ。
感覚の違う10の人間に同じ商品を売ることよりも、その人たちの琴線に触れるような「何か」を置いておきたい。
この箱を持って、本当に良かったと思うことは、自分が信じたことをやれていることだ。

この箱を借りて「ありがとう」
(H)
 
 
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【SUICOKE 2016 catalogue】

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SUICOKE 2016カタログのスタイリングとディレクションを担当しました。
岩、石、砂、灰、苔、木、山。
僕が普段から見ている要素を一つ一つ丁寧に組みあわせています。
写真もレイアウトも製本もとても綺麗で大満足の一冊です。
お店にも置いてあるのでよかったらみてください。
(H)
 
Photography
Masayuki Nakaya

Styling
Ryoji Homma

Art Direction&Design
Noriteru Minezaki

Design
Kosuke Shono

Print
Fujiwara Printing co.,ltd.

【 Spectator Vol.35 ~発酵のひみつ~ 】


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スペクテイターの35号が入荷しました。
今号の特集は「発酵のひみつ」です。
自分もページ作りに関わらせもらい、今現在も発酵の世界にどっぷりとのめり込んでおります。
普段は目にすることが出来ない細菌たちが繰りひろげる発酵の世界を初めて目の当たりにした時は、本当に不思議な気持ちになりました。
考えてみると味噌、醤油、お酢、みりん、酒、ビール、納豆、パン、チーズ、漬物など自分たちのまわりにある調味料や食品の多くが発酵物であり、そのほとんどが自分で思っているよりも簡単に作れてしまうのです。
たしかに発酵食品を作ることは、スーパーでその物を買うよりは手間は掛かりますが、売るために大量に作られたものよりも味に個性があって食べていてとても楽しい気持ちになります。
「食うために働く」という言葉がありますが、その概念は今と昔では大きく異なり、昔の人たちは作物の育たない長い冬を越すために「本当に食べるために働いていたんだな」と、少しだけ感慨深くなるのもポイントのひとつです。


そして、第二特集では昨年の5月に急逝された編集者の御供秀彦さんの追悼特集です。
詩とアートと音楽を愛し、人を愛した御供さん。
生前はたくさん遊んでもらいました。
「お疲れ様です‼︎」と言うとすかさず
「疲れてねぇよ‼︎」と返されたり、
自分が未来のビジョンなんかを語ろうもんなら
「自由を語るな!不自由な顔で‼︎」
とか、名言も聞かせてもらったり、
80年代に来日したキース・へリングを原宿案内したときの話や、90年代にエスクワイアで一冊まるごとデニス・ホッパーを取材したときの話も聞かせてもらいました。
(このときに自分は「編集者は自分の興味の赴くままに、自分の行きたい場所に行けたり、自分があってみたい人に会える素晴らしい仕事なんだ」と確信しました)
フォントショップで店番をしていると、ノーヘルでバイクでやって来ておもむろにポケットから出てくるおはぎをもらったり、思い返すと本当にいつももらいっぱなしでした。
御供さん、ありがとうございました。
(御供さん特集でも寄稿させてもらっています)

ということでスペクテイター35号、絶賛発売中です。

(H)

●Spectator vol.35 "発酵のひみつ"
¥952-(Plus tax)

【MOUNTAIN RESERCH 2015】

MOUNTAIN RESERCH 2015のタブロイドのディレクションとスタイリングを担当しました。

今シーズンのリサーチは「チョーク・ポケット」に焦点を当てて制作されているコレクションとなっています。

アートディレクションはThe Fhont Shopでも取り扱っているCONSTELLAITION BANDANNAを制作している((STUDIO))の峯崎くん。

カメラマンは今津さん(現在彼氏募集中)。

モデルはツリーハウス・ビルダーの竹内くん。
(彼の作品かっこいいので是非見てください)

そして...
そして、そしてもう一人のモデルは田渕義雄さん。

一度、お会いしたかった方です。

田渕さんの自宅で撮影する際にスタイリング・セッションとなり(やはりスタイリングにも一家言ある方です)、その時にみせてもらったご自身のワードローブやリビングのテーブルやストーブ、美しくて簡素な薪小屋、書斎の本棚から工房にある道具と、ありとあらゆる物、もの、モノ‼︎‼︎

そのすべてが然るべくしてそこにあるといった感じです。

久しぶりのカルチャー・ショックでした。

庭には家庭菜園、地下の木工作業場、リビングには薪ストーブとサンルームがあってそこにも家庭菜園、書斎には読んでみたかった本がズラリと並び、制作途中のフライフィッシングの毛針が置かれていて

『う〜ん...こりゃすごいぞ。この人、想像以上に生活を楽しんでいるな...でもこの生活は一朝一夕で真似できるもんでもないな...』

と、思わずこんな質問を

「毎日、やることあって本当に楽しそうですね」

「うん、そうなんだよ。だから最近旅行が嫌いになってしまってサァ。渡航先のホテルでゆっくりすることができないんだよ」

納得です。

生活の至る場所に哲学が混在しているという言い方が正確なのかわかりませんが、家に戻りソローの「森の生活」をパラパラやっているとこんな一文をみつけました。
 
『今日では哲学教授はいるけれど、哲学者はいなくなってしまった。
とはいえ、かつては哲学を生きることが敬服に値したのだから、それを教えることも敬服に値することではある。
哲学者であるということはこむずかしい思想を持つことではないし、もちろん学派を築くなどどいうことではない。
そうではなく、知を深く愛し、それが示す通り飾り気のない、何ものにも左右されない、寛大な、信頼にもとづいた生活を送ることなのだ。』

新装版「森の生活」著者 ヘンリー・D・ソロー 訳者 真崎義博
より引用
 
MOUNTAIN RESERCH01.jpg
 
自分がいくつになろうとも、刺激を受けれる仕事にたずさわれることを嬉しく思います。

(H)


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