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行きましょう、山へ。 西穂高岳〜奥穂高岳縦走ソロ編】

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みなさん、お元気ですか?
 
僕は北アルプスに行ってきました。
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
思い起こせば6年前、友人と二人で唐沢経由の奥穂高岳を目指し、穂高岳山荘に泊まったときに話した女性との会話からはじまった。
 
その女性、歳の頃は40代半ばくらいでソロで来られており、山の経験も豊富で話もおもしろい。
 
お互いに登った山の話で盛り上がっていると
 
「ところでアンタたち、ジャンは行ったの?」
 
と聞かれ
 
「いや、まだです...っていうかジャンてなんですか?」
 
と聞き返すとその女性は
 
「エ〜!!知らないの?...ジャン!?」
 
ひどく驚いているご様子。
 
そのあとは「ジャンはいいわ!ジャン最高!!」と、ジャンの魅力を語る...
 
ジャンに登ったこともないし知らなかった自分はなんだか急に恥ずかしくなってきて、とりあえず「ジャンダルム」と描かれた手拭いだけを購入して下山するという苦い思い出がある。
 
下山したあともいつかは登りたいと思っていたが、なぜかそのあと自分の登山熱は急激に冷めて、サーフィンに再没頭したり古着再再々ブームがやってきたり、サインペインティングにハマりにハマってジャンダルムのことなどすっかり忘れていた。
 
そして今年になって北アルプスの天候はずっと気にしていたのだが、なにしろ天気があまりよろしくなく登頂の機会を見失っていた。
 
西穂高〜奥穂高縦走には自分の体力だと最低でも3日間は必要だ。
(できれば平日がいい)
 
今後の仕事の予定と天気予報を見比べて、一つだけ仕事の打ち合わせをずらしてもらい今回の縦走に踏み切った。
 
友人にも何となく「ジャン行く?」とメールはしたが、彼はいまフライフィッシングに夢中らしく、ほかにジャンを狙っている友人も見当たらなかったので結果ソロで行くことにした。
 

 
 
 
早朝、新宿から松本行きの高速バスに乗って松本から平湯温泉へとバスで向かい、そこから新穂高温泉へ。
 
そのあとは新穂高ロープウェイでいっきに上昇。
 
「あぁ...なんて楽なのだろう。なんか申し訳ない...」
 
ロープウェイの駅から1時間ほどの西穂山荘でテント泊。
 
やはり少し歩き足りない。
 
行きのバスで充分に睡眠はとってきたので酒でも飲まないと寝れそうもない。
 
テントを張り終えて小屋で生ビールを注文してからは情報収集。
 
早速話してみると、どうやら今日滑落者が出たとのこと。
 
その方は4回目の縦走だったらしい。
 
4回だったらベテランとも言えないだろうけど、勝手は知って縦走している筈だ。
  
「もし、無理そうだったら引き返そう」
 
と、あらためて思う。
(そして呑む)
 
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翌朝。昨晩の痛飲がたたり6時半起床。
 
他のテントはすっかり無くなっている。
 
急いで支度をして7時に出発。
 
ガスっているが気持ちの良い道。
 
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西穂の独標までやってきた。
 
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朝ご飯を食べていないので、梅干しと楽しみにしていたカニ汁でも飲もうと準備をしていると、少しぐったりしている男性がひとり。
 
話しかけると10mくらい滑落したので、今日は下山するとのこと。
 
足と頭を強く打ったらしく顔色もあまりよくない。
 
どうか、お大事に...
 
そのあと賑やかなマダム御一行が到着。
 
マダムたちも独標がゴールでこのあと下山するようだ。
 
「あら、あなた一人で行くの〜?気をつけなさいよ」
 
「はい。気をつけます。ヤバそうだったら戻ってきますよ」
 
と、挨拶をしてとりあえず次なるピーク、ピラミッドピークへ。
 
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チラッと見えるピラミッドピーク。かっこいい...
 
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手前のピークに差し掛かったときに「おーい」という声が聞こえたので、振り返るとみんなが手を振っていてくれたので自分も応える。
 
「行ってきま〜す!!!」
 
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西穂高岳を越えて赤岩岳の途中にバックパックが置き去りにされていた。
 
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ザックカバーは劣化していてぼろぼろだが装備を見ると結構最近のものだ。
 
なんだか意味深なのであまり深く考えずに進むことにする。
(ソロだし...)
 
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赤岩岳から望む間ノ岳。
 
今日のテン場までまだ半分も進んでいない。
 
さらに思っていたより喉の乾きが激しく、計算よりも多く水を飲んでしまっている。
(軽い脱水症状になっているのだろうか?)
 
少量の水で回数を増やして喉を潤す。
 
まだ体力は充分にあるが少し気持ちが焦る。
 
でも、一歩一歩を絶対に疎かには出来ない。
 
一人なのでずいぶんといろんなことを考えるし、歌は唄ってるし、独り言も止まらない。
 
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青空が見えると気持ちも高揚する。
 
とくにこんな場所では下を向かずに空を見上げてひたすら登れるからなおさらだ。
 
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西穂高岳〜奥穂高岳の縦走コースの目印はとても丁寧でわかりやすかった。
 
これも誰かの手で印されているんだと思うと頭が下がる。
 
ソロで初めての縦走では、この目印が友達でもあり水先案内人でもある。
 
山の景観を壊すなんて口が裂けても言えない。
 
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間ノ岳山頂に到着。
 
ガイドさんらしき人、ヘルメットが自分とお揃い。
 
山のベテランの人はすぐにわかる。
 
理由は装備がその人にフィットしているから。
 
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間ノ岳から望む天狗岳が...遠いし険しいなぁ...
 
昨日はあの先で滑落事故があったと聞いたので、もう一度気を引き締めて天狗岳へと向かう。
 
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間天のコルの難所でもある垂直の鎖場。
 
「本当にこの鎖に命をあずけて良いものか?」
 
なんてことは間違っても考えてはいけない。
 
なるべく短時間でスイスイ登るように心掛ける。
 
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天狗岳を登頂。
 
ここでやっと半分くらいか?
 
水も残り少なく、常に喉はカラカラ。
 
飴や梅干しのタネの舐めてごまかす。
 
コカコーラの喉越しを想像しながらさらに歩を進める。
 
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天狗のコルを越えたあたりでガスが出てきて、視界が悪くなってきた。
 
このあと雨が降ってきたのでポンチョを被りバッグパックもすっぽり入れて、体育座りして雨がやむのを待つ。
 
このときにポンチョの生地を水平に持ち上げて雨水を溜めてすすり、喉の渇きを潤す。
 
さらにその溜めた水を水筒へと移すようになんとか試みる。
(手が3本欲しい)
 
そんなことをやっていたら雨が上がる。
 
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そして、ピーカン。
 
「女心と秋の空」とはうまいこと言ったもんだ。
(このあとは雹が降りだした)
 
コブノ頭に向けて、すこし重くなってきた足を両手でさする。
 
問題なさそうだ。
 
もう、ここまで来たらあとへは戻れない。
 
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コブノ頭を登りきったころにまたガスが出てきた。
 
そして目の前に見えるのがジャンダルムだ。
 
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いっこうにガスが晴れない。
 
さっきみたいな晴れ間が見えたときに、バックパックをデポしていっきに登ろうと待つが止む気配がない。
 
まだここからテン場までは距離があり、このあと「ウマノセ」のナイフリッジと「ロバの耳」の難所が待ち構えている。

時計を見ると3時半。
 
そろそろ日没の心配も出てきた。
 
登頂したかったけど、この状態ではさすがに意味がないと判断して今回のジャンダルム登頂は諦めることにした。
 
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ジャンダルムを横目でながめながら次なるピーク日本第三位の高峰奥穂高岳を目指す。
 
このときに今回のトレイルで痛恨のミスを犯してしまう。
 
何ということのない5mくらいの崖、そこには鎖がなかった。
 
トレイルの印はあるが、幅が狭くてとても降りづらいセクション。
 
そこでバックパックを先に降ろしてから、そのあとに自分も降りよう思いバックパックをできるだけそっと置くように投げると、なんとバックパックがゴロゴロと崖の下に落ちていった。
(地面が平らではなかった。そんなことも確認しないで投げるなんて...)
 
「ヤバい!!!!!!」
 
思わず声が出て全身が硬直。
 
ガラガラと響く音はずいぶん遠くに聞こえた。
 
すぐさま自分も降りてバックパックを探すが、外側のメッシュに入っていた荷物が手前で散乱しているだけでバックパックは見当たらない。
 
「うわぁ...どうする...」
 
もたもたしていると本当に日が暮れてしまう。
 
装備もない状態でこんな場所で一夜を明かすハメにでもなったら...
 
幸い財布は手元にあった。
 
「このまま捨てていこうか...」
 
装備なんてまた買えばいい。
 
それよりも大事なのは命だ。
 
とりあえず、近くにある荷物だけでも確保しようと恐る恐る下降する。

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手前で散乱している荷物を拾い、さらに先を凝視するとブルーのバックパックらしきものが見えた。
 
しめた!あそこくらいまでなら行けそうだ!
 
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しかし、それが大きな勘違いで実際はインナーダウンジャケットで、バックパックはあの場所から右方向へカーブして100m近く下まで落ちていた。
 
さらに自分のバックパックは雨蓋のない簡易式のものだったので、もうひとつ中に入っていたドライバッグがその途中に落ちており、その場所も向かうにはかなり困難な場所だ。
 
さっきまであれほど「大事なのは命」と思っていたのに遠くても自分の荷物を見てしまうと、やはり捨てていくのは惜しい気がしてきた。
 
バックパックは愛着があったしテントはまだ買ったばかり、シュラフは10年ものだがやはり愛着があった。
 
「とりあえず、降りれるところまで降りてみよう」
 
と、思ってしまい下降する。
 
ドライバッグの位置まで下降すると、そのすぐ下は40m近くの垂直に切り立った崖になっていた。
 
落ちたら間違いなく最後。
 
その光景を目の当たりにしたときに全身に鳥肌がたった。
 
首筋から腰にかけて悪寒を覚えた。
(まさに背筋が凍りつく)
  
いまの場所も決して安全ではなく、さらに上を見上げると自分がどのルートから降りてきたのかが、わからなくなっていた。
 
完全にヤバい状況を自分自身がつくってしまったことに気がついたときにはもう遅く、我に返ると両手が小刻みに震えていた。
 
「最悪だ...やばい...やばい...」
 
呼吸もなかなか整わずに動くのはあまりにも危険だったので、体の震えと呼吸を落ち着かせるために近くにある岩にしがみついて、もう一度状況をまとめようとするが思考がついていかない。
 
完全にパニック状態。
 
「なんで降りてしまったんだ!あんなものほっとけばよかったのに!」
 
と、後悔しても何もはじまらない。
 
この状況を作ってしまった自分の責任を、自分がとらないといけない。
 
なんとか呼吸を整え、もう一度冷静に下を見ると左側に高山植物まじりの岩場があり、その場所は比較的に傾斜の角度もキツくなさそうだ。
 
そして真横に15mくらいの距離のドライバッグのある場所も、よく見るとトラバース出来そうな岩がいくつかある。
 
「やるしかない...」
 
覚悟を決めて自分のすべての神経を集中させ少しずつトラバースしていく。
 
手のひらから岩の状況を読み取り、ぐらついていたり持ちづらい岩を避ける。
 
足の裏にも神経を集中させ、少しでも滑りそうな場所は極力踏み込まないようにそっと足を置いていく。
 
両手と両足の4つに掛かっている負荷を常に意識をして、そのなかで安全な岩を選び先へと進む。
 
もちろん命綱はない。
 
もし、この4つの中で一つでもミスがあったら、もう終わりだ。
 
「いける、いける...」
 
自分を励まし、ゆっくりと三点支持を繰り返しやっとドライバッグのあるすこし平らな場所まで辿り着いた。
 
「ふぅ...」
 
大きく息を吐いて下を見ると、何か白いものが見えた。
 
「なんだろう...」
 
と、反射的に足でつついてみると、プルンとその白いものがひっくり返った。
 
なんと、それは脳だった。
 
半身の頭蓋骨らしいものある。
 
同じ場所に内臓もあって内臓は少し乾涸びていた。
 
「ウワァァ!!」
 
と、声を上げる。
 
「なんなんだ、これは...」
 
自分の体がガクガクと震えているのがわかる。
 
状況がまったく理解できずにただその場所で全身の震えを抑えるだけで精一杯だった。
 
 「と、とにかくこの場所はヤバい!!」
 
ドライバッグを確保し、来たルートを引き返しトラバースしていく。
 
離れた場所からもう一度さっきの場所見る。
 
「もしかしたら動物のものかも?でもなんで遺体がないんだ...」
 
鹿にしては大きすぎて、熊にしては小さすぎる脳。
 
いくら考えても答えは出ない...
 
しかし、自分の状況もまだドライバッグを一つ確保できただけだ。
 
ここから下へ降りてバックパックを確保して、またこの場所へ戻って、さらに上のドライバッグも確保しなければならない。
 
「オレはオレのことだけに集中しないと」
 
大きく息を吸って吐き出してから下降する。
 
左側へトラバースしながら降りるには岩場をつたっていかないといけない。
 
濡れている岩の中からしっかり掴めるものを選んでゆっくりと降りる。
 
「いけるいける...」
 
岩の裂け目に手を突っ込んで軽く握りこぶしをつくり引っ掛けてゆっくりと降りる。
 
一度でも失敗したらもう終わりだ。
 
「いけるいける...」
 
名前の知らない葉っぱが緑から黄色、赤へと紅葉していた。
 
「綺麗だな、いけるいける...」
 
「違うだろ、この岩じゃない、こっちだこっち...」
 
つねに自分に声を出して語りかけていないと頭がおかしくなりそうだった。
 
もしかしたら、もうおかしくなっているのかもしれない。
 
でも、そんなことはどうでもいい。
 
生きてさえいればそれでいい。
 
生きてさえいればそれでいい。
 
気がつくと、自分は岩を降りながら泣いていた。
 
それは山の怖さと自分の愚かさと、大切な人たちへの申し訳ない気持ちからだった。
 
そしてバックパックのある場所に辿り着いた。
 

 
そこは安全な平地で遠くからはわからなかったけど、ゴミだったり朽ちたナイロンが落ちていた。
 
「もしかしたら、ここから登る強者もいるのかな」
 
そう思うと少しだけ勇気がわいてきた。
 
同じ人間がこの場所を登っているというだけで心強い。
 
バックパックを確認すると、どこにも穴があいておらずあらためてX-pacという素材の強さに感心した。
 
そして大きく深呼吸をして、入念にストレッチをしてバックパックを背負い降りてきたルートを登りだす。
 
登りはあまり感傷的にならないように精神面でも気をつけないといけない。
 
なぜならまた泣いてしまったら涙を拭う動作も登りには危険だし、視界にも悪い。
 
できる限り冷静に慎重に登ることを心掛けた。
 
「いけるいける...」
 
「この岩いける...」
 
「これはダメこっちこっち...」
 
と、スムーズにドライバッグの場所まで登ることができた。
 
しかし、ここからが問題だ。
 
なぜなら自分はここまで降りて来るときに気が動転して、どのルートで降りてきたのかを完全に忘れてしまっていた。
 
何度も言うように、たった一度の失敗が最後。
 
岩にしがみついて出来るだけ体を反らし、ルートを確認するが目視にも限界があったのでいまの位置から行きやすいルートをとる。
 
しかし、しばらく登るとその先に掴みやすい岩がない。
 
「ダメだ...いけない...」
 
そこからトラバースも難しそうだ。
 
仕方がないので戻る。
 
この行為がとても気持ちを焦らせる。
 
「いったいオレはどこから降りたんだよ!」
 
もう一度、次は別のルートをとるけど、そのルートも途中で足を掛ける場所がない。
 
両手で掴んでいる岩は自分の頭くらいの高さで、ある程度しっかりしている。
 
どうする?
 
このままいっちゃうか?
 
それとも戻ってまた別のルートを探すか?
 
いや、もうないよ...これしかない。この岩に頼ろう...
 
目をつぶって考えた。
 
家族の顔が浮かんできた。
 
懸垂の要領で体を持ち上げて右足をそのまま岩に引っ掛けて、岩に抱きつくような形で乗り上げた。
 
そのあとは傾斜の緩い斜面を登って最後のドライバッグを確保してもとのトレイルへと戻った。
 
「ふぅ...」
 
どうやら無事に帰って来れた。
 
喉の渇きは限界を超えており、水筒に残っていたわずかな水をすべて飲み干した。
 

時計を見るともう5時近くだった。
 
どうやらあの場所で1時間くらい格闘していたということだ。
 
ゆっくり休んでいる暇はない。
 
奥穂高岳へと急いで向かう。
 
途中に難所と言われている「ロバの耳」、「ウマノセ」のナイフリッジにさしかかるが、とくに問題もない。
 
トレイルにペンキの印が記されているのでただその通りに進めばいい。
 
どんなに切り立ったルートでも安全に思え、自分でも驚くほどのスピードで進めた。
 
感覚が研ぎ澄まされているのがわかった。
 
叫び出したいほど感情が最高潮に高まっているのだが、その奥にいる自分はとても冷静で俯瞰で見ている。
 
とても不思議な感覚。
 
「福腎」という臓器をご存知だろうか?
 
腎臓の真上にある臓器で三角形の形をしており、重さは腎臓の約5/1、大きさは2、3センチの副腎は90%は皮質で覆われ、中心にある10%の髄質が極度の緊張に達すると、アドレナリンとノンアドレナリンの二種類のホルモンを分泌する。
 
その二つのホルモンが作用した結果、体がいちばん必要としている部位に血液が送り込まれて、また中枢神経も同時に刺激されるという話を本で読んだことがあった。
 
たぶん、このときアドレナリンとノンアドレナリンが自分の人生のなかで、最も多く分泌されたのではないか。
 
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そしてゴールの穂高岳山荘へ。
 
あぁ、コーラ飲みたい!!!!!
 
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誰とも話す気になれずに、夜の7時まえに寝てしまい寒さでまた起きる。
 
時計を見ると夜の11時半。
 
温度計を見ると4℃だった。
 
お茶を入れて、今日起きたことを振り返る。
 
「きっとあの場所で滑落して生きてても、この温度では低体温症になって助からないな...」
 
今回の登攀でソロの危険性がイヤというほど理解できた。
 
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結局寒さで眠れずに朝になる。
 
テントから素晴らしい景色。
 
美しい。
 
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あぁ、すごい...
  
見ていると込み上げてくるものがある。
 
このまま槍ヶ岳まで行きたい気持ちをおさえて下山の準備をする。
 
今日の夕方5時半から原宿で打ち合わせがある。なんか不思議。
 
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朝日に照らされる笠ヶ岳を眺めながら下山。
 
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いつの間にか小屋も見えなくなってしまった。
 
色々あったけど下山するときはやっぱり寂しい。
 
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途中ですれ違った登山者。
 
献花を持って登っていた。
 
山の仲間を亡くしたのだろうか。
 
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木漏れ日も綺麗だ。
 
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グショグショに濡れた装備を乾かす。
 
これをやっておくと帰ってから楽だ。
 
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帰りのバスからの眺め。
 
奥に見えるのが西穂高岳。
 
また今日も多くの登山者が登っているのだろう。
 
どうか、事故がありませんように...
 
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山のGPSアプリを使っていたので確認してみると、ジャンダルム付近でトレイルを踏み外しているのが確認できた。
(やけに生々しく見える)
 
覚悟はしていたけど、今回の縦走は遊びの範囲を超えてしまった。
 
やはり自分にはもっと楽な山があっている。
 
今度はどこに行こうか。(H)
 

 

 

 

 

行きましょう、山へ。 神田川ソロ編】

 
みなさん、お元気ですか。
 
僕は待ちに待った、「パックラフト」が届きました。
  
あのパックラフト体験から戻った夜に海外のサイトでポチってから特にレスポンスもなく過ぎ去る時間。
 
「もしかしたら...」と、ドキドキしながら待っていた矢先に
 
「今週送るから〜」的なメールが届いたときの幸福はみなさんご周知のとおり。
 
それからは家のチャイムが鳴るたびに僕は熊川哲也のごとく
 
クルクルと回転しながら玄関へと向かうものの
 
実際の荷は嫁のクリームだったり、N野のアマゾンだったりすること約5日間。
 
とうとう、とうとうやってきました!!!
 
さあ、まずは膨らましてあらゆる角度から鑑賞。
 
3次元Rをやさしく撫でて、いざ乗艇。
 
そのあとは静かに目を閉じて
 
「大自然の中で緩やかな川の流れに乗っているオレ」をイメージ...
 
と、部屋の隅で瞑想を繰り返します。
 
しかしそれも3回くらいやると、こっちもいい大人なので飽きてくるわけです。
 
しかししかし今週は山へ行く時間がない。
 
ただでさえ「本間さん、最近だいぶ行ってますね」的な白い目で見られているので
 
今週はさすがに不味い。
 
でも行きたい!!!
 
ということで、東京の川をクルージングすることに決めました。
 
tokyo river01.jpg
ウ〜ン...良い。
 
このあとは柵を越えて川で乗挺するのですが
 
これがなかなかスリリングで、なんとなくコソコソしてしまいます。
(目立たない色でよかった)
 
道標がないので、すべてが自分の判断というわけです。
 
これはもう立派な都会の冒険ですよね。
 
 
TOKYO RIVER10.jpg
いざ出艇。
 
街の音を水が吸収しているのでしょうか。
 
喧噪が和らいでいくのがよくわかります。
 
無音ではないけれど、陸地がとても遠くなったような音です。
 
この日は初乗りだったので、芝浦あたりを小一時間ばかりクルーズして終了。
 
家に戻ったあとも、とてもいい感触が残りました。
 
必要なものと不必要なものが見えてきました。
 
 
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次の日は朝9時に浅草橋に到着。
 
昨日の経験を踏まえて持っていく荷物やバッグの種類も変更。
 
乗艇できそうな場所を探すけど、なかなか見つからずに10時近くまであたりをウロウロして
 
隅田川から乗挺、ほんのり神田川へ。
 
見えるのはお茶の水駅近くの聖橋です。
 
よく見ているビルやよく通っている橋でも川からの視点だと、どこにいるのかさっぱりわからなくなるので
 
グーグルマップを見ながら慎重に進みます。
 
 
tokyo river03.jpg
川から見上げるビルは圧倒的でちょっと怖いくらいです。
 
この中で何人の人が働いているんだろう。
 
みんなでいったい何を作っているんだろう?
 
と、普段は考えもしないことを考えてしまいます。
 
 
tokyo river08.jpg
中央線の線路の下では耐震補強工事をしていました。
 
この視点は確実に金曜日の深夜番組ですね。
 
とりあえずご苦労様です!!
 
 
tokyo river04.jpg
壁に生える雑草。
 
水の染み。
 
補修のライン。
 
すべてパーフェクト!!!
 
最高にかっこいい!
 
ビューティホーです。
 
テンションが上がります。
 
 
tokyo river05.jpg
水面が反射してキラキラ。
 
植物もキラキラして綺麗です。
 
今度来るときは魔法瓶にお茶でも用意して来よう。
 
 
tokyo river11.jpg
さらに奥へ進むと分水路がありました。
 
ヘッドライトを持っていなかったので今回はパスします。
(嘘です。持っててもパスです)
 
 
tokyo river06.jpg
そのあと日本橋へ。
 
橋からは見えませんが、川から見る日本橋には獅子がいます。
 
やはり首都高が日本橋の景観を見事にぶっ壊しています。
(地上絵のような渡し板のデザインも好きになれない)
 
 
tokyo river07.jpg
すっかり興ざめをしてしまったので、茅場町付近で右折して水門をくぐって八丁堀方面へ向かい、今日はお開きです。
 
 
tokyo river09.jpg
こんなコンパクトになってしまうのは本当に嬉しい限り。
 
偶然に当たった上げ潮に流されて浅草橋を出発したあたりは良かったのですが、
 
折り返し地点の水道橋から茅場町までの行程が少しキツかった。
 
潮の干満と風を調べていたらもっと楽にクルーズできたかもしれません。
 
 
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tokyoriver13.jpg
そういえば神田川、日本橋川はともに荒川水系です。
 
以前に甲武信ヶ岳の荒川源流点に行ったことがあり、
 
あのときに喉を潤わせてもらった水に浮かんでいると思うと妙な気持ちです。
 
次回はもっと上流でクルーズしたいと思います。
 
それではみなさん、ごきげんよう。
(H)


 
 

行きましょう、山へ。 鳳凰三山編】

 
みなさん、お元気ですか。
 
僕たちは南アルプスの鳳凰三山の縦走に行ってきました。 
ホーオ01.jpg
 
当たり前だけど、尾根を縦走するには尾根まで登らないといけません。
 
僕はこの「登り」が大嫌いです。
 
木々に覆われて風が抜けないし、景色はいつまで経っても変わらない。
 
自分が今どの辺りにいるのか確認するのも、すれ違う人たちとの挨拶さえも億劫になる。
 
サーフィンで言うと「登り」はパドリングです。
 
セットの波のなかゲッティング・アウトしている心境と、とても似ている。
 
でも山の「登り」は疲れたら好きな場所で休めばいい。
 
誰も僕のことなんか気にしてやいないし、そもそも、ここには誰もいない。
 
これが山の良いところ。
ホーオ03.jpg
息を切らせ、まわりを見るとたくさんの生き物が超サイレントに暮らしている。
 
風が凪いでも上のほうで葉っぱが揺れてカサカサと音を立てている。
 
もう少し登ったらあの風が浴びれるのかな?
 
ホーオ09.jpg
木漏れ日のミラーボール。
 
で、「おー!」とか言ってみても、やっぱりまわりには誰もいない。
 
ホーオ04.jpg
キノコがニョキニョキ伸びていると、なんか嬉しくなる。
 
でも、詳しくないので写真だけ。
 
ホーオ06.jpg
これを食べたらきっと身長が2倍になるな。
 
でも食べないよ。
  
ホーオ05.jpg
ホーオ07.jpg
この辺はもう南方熊楠の世界。
 
さわるとプルンプルンです。
 
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そんなこんなで尾根まで着きました。
 
天気は最高!!
 
ここはどこだ?
 
ここは宇宙船地球号だ!!!

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ホーオ15.jpg
ホーオ14.jpg
ホーオ20.jpg
本当に素晴らしすぎてお手上げです。
 
こんなに素敵な場所があったことに気がつけて良かったと、思います。
 
それでは、みなさんごきげんよう。(H)
 

行きましょう、山へ。 犀川ダウンリバー編】

 
みなさん、お元気ですか。
 
僕たちは安曇野へ出掛けてみました。
 
お目当てはパックラフトという乗り物で遊ぶためです。
 
パックラフトとはインフレータブル・ボート(空気で膨らますボート)を
 
軽量化してバックパッキングできるラフトボートのこと指します。
 
小さなモデルで2.15kgという驚きの軽さで折り畳むと
 
20cm×50cmというコンパクトさが魅力です。
 
このボートを手に入れてバックパックで背負って
 
電車で川の上流まで行き、下流まで下ってから電車で帰る。
 
なんて夢のような日常を思い描いていました。
 
しかし、インフレータブルの弱点は骨組みがないことによって船体が歪むことです。
 
船自体が歪むと、どんなにパドリングをしても力が分散されて
 
自分が行きたい方向への進行は難しくなります。
 
そこで自分の足を伸ばして船全体にテンションをかけます。
 
この「自分の体を骨組みとする」というシンプルかつ理にかなった概念に
 
僕の心は完全にロックオンされてしまったわけです。
 
1ヶ月くらい前から購入を考えていたのですが、高い買い物になるので
 
失敗は絶対に避けたい。
 
パックラフトは自分の体とのフィッティングが重要になります。
 
インターネットでいくらパックラフトのサイズ表をながめても、まったくイメージが出来なかったので
 
実際に体験してみよう、というのが今回の旅の目的です。
 
Azumino-02.jpg
どうですか?この景色。
 
ヒューヒューって感じです。
 
川の流れに乗りながら移り変わる景色のスピード感がご機嫌です。
 
azumino-1.jpgのサムネール画像
流れが穏やかな場所では足をだしてノンビリと景色を味わいます。
 
水も冷たくって気持ちがいいです。
 
何種類かパックラフトに試乗させてもらい、
 
自分にフィットするサイズも確かめることが出来ました。
 
Azumino-04.jpg
それにしても美しすぎる北アルプスの景色。
 
いま常念岳の山頂にいたら最高だろうなぁ...
 
と妄想をかき立てながら教えてもらったキャンプサイトへ向かいます。
 
Azumino-03.jpg
明るいうちにテントだけ建てておいて、メシは町へ食べに行きます。
 
キャンプサイトが山の上でないときはこのようなハイブリッドスタイルが楽です。
 
無理にキャンプとBBQをセットで捉えるとただ忙しいだけ。
 
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夜は月が綺麗でした。
 
機会があったら月明かりでナイトハイクなんてのもいいですね。
 
欲を言えば森林限界を超えた標高で歩けたら最高です。
 
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翌日は上田市へ移動してディーラーさんをまわってからのケヤキの巨木見学。
 
う〜ん。デカイ!!!
 
やっぱり巨木は良いです。
 
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相変わらずMYOGも止まりません。
 
止水ジップが届いたので制作できるバッグのバリエーションも増えてきました。
 
そろそろ大物に取りかかりたいのですが、何を作るかまだ決めかねています。
  
それではみなさん、ごきげんよう。
(H)

 


 

行きたいな、山へ。 こつこつMYOG編】

 
みなさん、お元気ですか?
 
僕は山には行けてません。
 
そのかわりに山に持っていくギアを作っていました。
 
自分のギアを自分で作ることをアウトドア業界では「MYOG」(Make Your Own Gear)
 
というらしいのですが、やっていることと精神は「DIY」と変わりません。
 
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最初は捨ててしまおうと思っていたブルーシートを使用して
 
スタッフサックを作ってみました。
 
昔の2-tacsのタグをつけてみると何となく雰囲気が出てきました。
 
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結構コンパクトになります。
 
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ベージュの素材は反物の生地が送られてくる際に梱包用に使われている素材です。
 
ビニールに紙が接着されていて、濡れには弱いけど強度は充分にあります。
 
この素材も以前は捨てていましたが、やっと再利用の方法を見つけられました。
 
視点の変化によって、今まであった身の回りのモノも変化していく
 
この現象を僕は「3rd EYE」(第3の目)現象と呼んでいます。
 
ちなみに僕の人生で一番最初に「3rd EYE」を授けてくれたのはスケートボードです。
 
ストリートのあらゆる場所がセクションに見えてしまうようになって
 
都会でスケートボードさえあれば、どこでも遊べる視点を授かりました。
 
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嫁からのリクエストで買い物用のエコバッグ的なモノも作ってみました。
 
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今まで山では100円ショップのケースを使っていましたが
 
少し味けがないので、シンプルな財布も作ってみました。
 
友人に見せると、これがなかなか好評で手売りも始めました。
 
興味のある人は、僕を見かけたら声をかけてください。
(いつも持っています)
 
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そして、気がつくと3gとかなりの軽量です。
 
すべては山へ向かうための準備です。
 
結局、ギアは山というハードに向かうためのソフトなんだなと最近思います。
 
ウルトラライトとウルトラヘビーのどちらも山へ向かうためのその人なりの道。
 
どっちでもいいです。
 
遊びくらい自分勝手になりましょう。
 
あぁ。山へ行きたい。(H)
 
「山を思えば人恋し、人を思えば山恋し」(百瀬慎太郎)


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